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南郷大島
釣りサバイバル生還記01
「帰り道が分からない」
(読み物)

2020年9月13日17時00分

南郷大島 市営定期船あけぼの3号

小浜港行き

ここが運命の分かれ道

もう一つの港は既に数名先客、一緒に乗ってきた乗客の2名も

竹之尻港に下港。対して自分ら兄弟は、ここでは降りずにもう一つに向かうことに

ここで、「あ~こっちの方が人気で釣れるのかな」と思いつつ次の港へ

港に到着すると案の定というか何なのか他に人っ子一人おらず

自分たち兄弟だけの二人だけという状況だった。

まあ、釣れるかどうかは何処であろうと分からないので

気兼ねせずに釣りが出来ると楽観的に思っていた。

到着後すぐに堤防に荷物を置き

釣り竿と磯靴バッグにタモ網とゲル状の着火剤を詰込み

堤防から山を登って磯場へ降りる場所を見つけに向かった。

先週、初めてこの島に来た時に、山の中腹に降りる所があり

そこを降りるとヒラスズキが釣れる所があるという話を聞いていて

ヒラスズキだけであれば、どこでも釣れる可能性はあるのでそこまで興味は沸かなかったのだが

そこには水源があり、岩から流れてくる湧き水があるらしい。

その水は水質検査も全く問題がないキレイな飲める水であるらしく

自動販売機さえ無いこの島では物凄く魅力的に思えて、半分それ目的に

足を運ばせたのだった。

そういった事で、10分弱あるいた所で目的地かもしれない磯の降り場に到着し、分け入っていったのだったが

すると半袖半ズボンの恰好では若干うっそうと感じるほど草や枝が左右からあり、

地面も湿り気があり若干ぬかるみがあった。

下ること2分、3分ほどあるいた所で、半袖半ズボンで磯靴を履いていない弟には

地面のぬかるみが危ないと思われる場所に差し掛かったため弟にはここで少し待つように

言ったところ、「おれはもう危ないから引き返す」といった返事。

まあ、それも一理あるなと思い自分だけ足を進めることに

さらに5分ほど降りていくとゴロタ浜が広がっていたが、水源は特に見当たらない感じがしたので

とりあえず竿を何投かして元の場所に戻ることに

4、5回投げ、やはりこれで気が済むわけではなく少し移動してまた数投

しかし、今は場所確認が目的でもあったため、実質10分ほどで釣りを切り上げ

(この頃、恐らく18時前)

まだ明るいうちに戻らなくてはと降りてきたであろう所に戻り、来た時には

長ズボンは履いていたが、上は半袖のままだったので長袖に着替えて、いざ山を登ることにした。

なぜか木々のツルがうっそうと生い茂り、持っていた荷物が引っ掛かり通れたはずの所に入り込めなくなっていた。

ここで焦った。来た道を間違っていたのかと他の道を探るがここも同じくツルだらけ。

ツルに足を取られ前に進めずこけにこけしまう。

さらに焦った。ここで携帯を取り出し、弟に電話して途中まで来てもらって場所を教えてもらおう。

そう思ったが、圏外。港では電波が入っていたのに、前回この島の別の磯に居た時も使えたのに

ここは圏外。ここでパニックになってしまった。

ヤバいこれは、ヤバい。このままでは、夜になってしまう。

そこで、思い付いたのが前回来た磯側に回れば時間を掛けてでも通って帰れるんじゃないかと

歩き始めた。若干岩場が高いかなと思いながらも岩を上り下りしながら、岩場の頂点に上がり

あとは降りるだけと思った瞬間、絶望した。見下ろすとそこから先は岩場を伝っていけないワンドなっており断崖絶壁だったのだ。

ここに来て、疲れがどっと出てきてノドが乾くも、持ってきた飲み物は殆ど堤防に置いていて

手元には小さいミネラルウォーターの空いたペットボトルのみ。

水分不足で、筋肉も疲労し、へたり込んだ。

しかし、このままいると逆に危ないと思い、気力をしぼり岩場を降り始めた。

いくつ目かの岩に差し掛かった時に、上がる時には少し高いけどそこまで問題無いと思った所が

疲労も溜まっている事もあり、上から見ると恐怖感が増してきて

降りられなくなってしまった。荷物を下に投げ下ろし、お尻を付けて慎重に飛んで下に着地しようと思った所

ノドが乾いて予想以上に疲労困憊となっていたらしくバランスを崩し上手く着地が出来ずズキッ!と足を挫いてしまった。

立ち上がろうとした瞬間、痛みが尋常じゃなくこれはやってしまった。本能的にそう感じた。

さすがに、ここで命の危険を感じた。まずは岩場から降りるのが先決だと絶対的にそう感じて、痛みを堪え下まで降りた。

やっと地上のゴロタ浜に降りたはいいが、この辺りの方が石がグラつき足に響いて痛みが増した。何とかかんとか

大きな一枚岩の所までたどり着き這いつきばっていると、水のチョロチョロとしたせせらぎが聞こえてきたのだ。

やはり、噂に聞いていた水源があるのかもしれないと、ツラいながらも力の限り見渡して探すと

岩の隙間からチョロチョロと湧き水が流れ出ていたのだ。やっとノドを潤せると手酌で水をすくって飲んでみた。

そこまで冷たくは無かったが、本当に本当に生き返るほどに美味しかった。いや実際に生き返った。

何度も何度も飲んだ。途中からじれったくなって、空いたペットボトルがあるのを思い出して

それに水を流し込んで一気に飲んだ。本当に美味しくて、のどの渇きが取れて美味しかった。

ここなら、ライトも手元にあるし、着火剤もあるので、もし数日間過ごすことになったとして

水分も取れて最悪死ぬことは無いはずだと、ここで待つことにした。

暫くすると、月周りが闇夜に向かっていく若潮~中潮だったのでだんだんと暗くなってきた。

ライトはあったがずっと付けていると、もしもの時に使えないと感じ、持ってきていた

ゲル状の着火剤を石の上にぶちまけライターで火を付けた。

人間、火が揺らめいているのを見るだけでも落ち着くと言われるが、まさにそうだった。

暫く、火を付けては消えてを繰り返していると手からライターが零れ落ちてしまい、石の隙間に落ちてしまった。

これは絶対に無くしたらいけない物だと直感し、慎重に石をどけて奥に入り込まないように無事取り出した。

今度は絶対に無くさないように火を付けたら必ずチャックポケットに入れて、チャックが閉まってるかを確認する癖を付けた。

そしてまた、火を付けると少し安心した。

が、着火剤だけだと当然ゲル状の物体がなくなるとすぐに消えてしまう。

しかも炎の色がほぼ無色透明で、もし救助が来ていてもアピール力が弱く、木々を集め回ろうにも

移動がままならない状況では難しいと判断。さらに暗くなるにつれて波の音を聞くたびに波の心配もするようになった。

今日は若潮で明日は中潮、大潮まで日数はあったし水際から50mほどで水面から2mほどの位置にはあったため

問題は無いと思ったが、もしうねりや高潮があるとほぼ逃げ道が無い場所だったため、

少し離れた所に波で打ち上げられたガラクタ等がある所に移動し、火を付けれそうな物が無いか

探し回り大きめの発泡スチロールがあり、着火剤で火を付けてみた。すると火は付くのだが

どんどん発泡スチロールを溶かして内部に火が潜っていくだけで、燃え広がらない。

他の木々なども湿っており、燃え移らないため、ここで夜を明かして助けを待つのも難しいと判断し

湧き水が惜しくもあったが移動する決心をした。

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