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南郷大島
釣りサバイバル生還記03
「負傷して遭難」
(読み物)

上に外灯か月明かりの木漏れ日が見えて分岐点に差し掛かった。

左に行けば外灯が近づくが、若干土が柔らかく崩れそうな雰囲気がある。

そのまま上にまっすぐ上がれば、若干絶壁気味でそのままでは行けないが土はしっかりしてそうではある。

悩んで、その場で座り込んで休憩する事に。それまでにも木の根っこにもたれ掛かって、水を飲みながら休憩していたのだが

体力が少し戻ったところで、そのまま上に進むルートに決めた。

そのままでは足が届かないので、荷物を上に投げて太い木に手を何とか巻き付け這い上がる事が出来た。

この辺りから、もう戻ることが困難になり始めていた。

この辺りから、俺はここにいるとアピールするためにも、負ける訳には行かないと自分を鼓舞する意味でも

「クソが!」「やってやんよ!」「ゼッテー帰えんだよ!」などもう取りあえず

恐怖に支配されないために、絶叫しながら上に進むようになっていた。

そこからほんの少し上に上がった頃、今まで通り太めの木を掴み上に上がろうと体重を掛けた瞬間

木がバキっと折れて、そのままずり落ちてしまった。リュックを背負っていた事が幸いしたのか、1mほどの滑落で済んだ。

しかし、その瞬間は走馬灯のように、あの難関の絶壁を見ながらあそこから落ちてしまったら重傷だな、

もう無理だろうなと他人事のように思ったのだった。そこで、生きてていいと運命に生かされたのだ。

そう感じて、ここからは太い木であろうと、しっかり腐っていないか、一度ぐっぐっと木の強度を確認する事を学習した。

そこからは、太い木よりも弾力がある生木を中心に選んでいくようになった。

そして、ペットボトルの水が殆ど無くなってきたので、そこからは口を湿らす程度で水分補給を済ませるようにした。

今までの実生活では、口を湿らすだけでは意味が無いと思っていたのだが、限界を迎えていると水を含んで湿らすだけでも

気力が沸くこと分かった。

そろそろ外の明かりが木々の隙間から漏れてきてあともう少しだと安心してきた頃、また奴が立ち塞がったのだ

ツルの密集地帯が。あまりにも密度が濃すぎて地面も見えないほどだったため、今度はツルの上に登って這い上がっていけば

外に出られるのではないかと、竿を思いっきり上まで放り投げた。

そして、ツルの上に上がり体重を掛けると、ぐんっとツルがたわんだ。密集具合がすごいので抜ける感じはしないのだが

何か嫌な予感がした。一度、ツルの上から降り、ツルと地面の高さを確認するために、ぐっと下を覗き込んだ。

すると案の定、ツルと地面の間は高さがあったのだ。最低1m、上に進むにつれてもっと高くなっていると想像した。

そこで、その道は諦めて、迂回してそのツルの頂点付近まで行く事にした。

辿り着いたと思われる所で、さっき投げた竿を回収するため上をライトで照らした。

なかなか見当たらなかったが、ちょうど今いる所は少し拓けてて、上を見上げると空が見え

ヘリコプターの音も聞こえる場所だったためこの辺りでいったん休憩場所とする事にした。

少し休憩して、座りながらこの先がどうなっているか確認するためライトで前方を照らそうとした。

スイッチを付けると点かない、時々接触が悪くなるので何度もカチカチと付けたのだが点かない。

嫌な予感がし、良く見てみるとライトの電池ケースが無くなっていた。

さっき、竿を探すため上を照らしていた時に外れて落ちてしまっていたのかもしれない。

まだ、ライターはあったので今いる身の回りを見てみるが、無い。あらためてポケットに落ち込んでないか見てみるが、無い。

これはもう終わったと思った。諦めた。朝になれば、明るくなってライトが無くても問題無い、朝まで待てば大丈夫。

釣り竿とリールはもう諦める。リールはすでに空回りして壊れていたが、竿は壊れていなかった。

竿は、これまで途中から杖代わりに使っていて、何度もパチッと引っ掛かっては折れてない事を確認して

まだ大丈夫、意外と丈夫だなと思いながら、ここまで来たのだが、もうここで付き合いは終了。

ありがとう、コルトスナイパーS1000H。まだ、大きな青物は釣らせてやれなかったけど、命まで助けてくれてありがとう。

夜を明かすのに、あとどれぐらいか。スマホも無くなったし、どうすれば良いか。

思い出した、腕時計をつけていた。時計のバックライトボタンを押して、ピッと音がするけど点かない。

何度も色々押しているとやっと点いた。良かった壊れてなかった、さすがG-SHOCK。

(この時たしか、20時過ぎ)

まだまだ、明るくなるまで長い夜が始まる。

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